ISSUE 003 · GLOBAL WORKFORCE

A Strong Workplace Makes It Safe to Ask for Help.

Designing Psychological Safety Through International Employment and Japanese Language Education

外国人雇用と日本語教育から考える、心理的安全性の設計。安心して質問でき、失敗から学び直せる「戻れる構造」を組織に実装する。

People gathered around a table in a shared workplace

助けを求められる組織は、強い。

外国人雇用と日本語教育から考える、心理的安全性の設計

A Strong Workplace Makes It Safe to Ask for Help.

「分かりません」と言える職場だろうか。

職場で、こんな言葉を耳にすることがある。

「分からなければ、聞いてください」

一見すると、当たり前の言葉だ。

しかし、本当に大切なのは、その言葉を伝えたかどうかではない。

相手が、安心して質問できる環境になっているかどうか。

例えば、外国人スタッフが仕事の指示を十分に理解できなかったとする。

もう一度聞きたい。

けれど、何度も質問すると迷惑をかけるのではないか。

能力が低いと思われるのではないか。

そんな不安から、質問をためらうこともあるだろう。

このとき、問題を本人の日本語能力だけに求めてよいのだろうか。

私は、そうは思わない。

問われているのは、言語能力だけではなく、組織のあり方そのものだからだ。

日本語教育だけでは、解決できない問題がある。

外国人材の受け入れにおいて、日本語教育は欠かせない。

業務上の指示を理解すること。

自分の考えを伝えること。

困ったときに相談すること。

これらは、安心して働くための重要な力だ。

しかし、どれほど日本語を学んでも、質問すること自体が難しい職場では、その力を十分に発揮できない。

言葉を学ぶ側の努力だけでなく、言葉を受け止める側の姿勢も必要になる。

例えば、管理者が指示を短く明確に伝える。

重要な内容は、相手の理解を確認する。

質問されたときに、責めるのではなく、一緒に確認する。

こうした日常的な行動が、職場のコミュニケーションを支えている。

日本語教育は、本人の能力開発であると同時に、組織全体のコミュニケーション設計と結びつけるべきものだ。

私は、日本語教育を単なる福利厚生として捉えていない。

それは、組織が機能するための基盤である。

Japanese language is not a skill. It is infrastructure.

心理的安全性とは、優しくすることだけではない。

心理的安全性という言葉がある。

これは、単に仲良く働くことでも、厳しい指摘を避けることでもない。

必要なときに質問し、意見を伝え、間違いを報告できる環境をつくることだ。

特に介護現場では、この考え方が重要になる。

利用者の安全に関わる情報を共有すること。

自分の判断に不安があるとき、確認すること。

小さな違和感を、周囲に伝えること。

こうした行動が、日々の仕事の質を支えている。

もし職員が、叱責を恐れて報告をためらうようになれば、組織は重要な情報を失う可能性がある。

だからこそ、質問や報告を個人の勇気だけに任せてはいけない。

安心して声を上げられる仕組みを、組織として設計する必要がある。

「戻れる構造」を組織に実装する。

私は教育について考えるとき、「戻れる構造」を大切にしている。

子どもが失敗したとき、すぐに答えを与えるのではなく、もう一度考える機会をつくる。

挑戦がうまくいかなかったとき、失敗だけでその子を評価しない。

そして、再び挑戦できる余白を残す。

この考え方は、大人の組織にも通じる。

もちろん、職場には責任がある。

特に安全に関わる業務では、誤りを見過ごすことはできない。

しかし、責任を明確にすることと、人を萎縮させることは違う。

間違いが起きたときに原因を確認する。

必要な指導を行う。

再発防止の仕組みを整える。

そして、本人が学び直せる機会をつくる。

これが、私の考える「戻れる構造」の一つの形だ。

失敗を許容することと、失敗を放置することは違う。

人が成長できる組織には、その両者を区別する設計が必要なのだと思う。

受け入れ企業が、明日から始められること。

外国人材の受け入れを考える企業に、私は3つの取り組みを提案したい。

第一に、質問できる時間を意図的につくること。

「いつでも聞いてください」と伝えるだけではなく、勤務の中に短い確認の時間を設ける。

例えば、業務開始前に指示内容を確認し、終了後に困ったことを振り返る。

質問することを特別な行動ではなく、日常の仕事の一部にする。

第二に、管理者の伝え方を見直すこと。

日本語が十分に伝わらなかったとき、本人の理解力だけを問題にしない。

指示が長すぎなかったか。

専門用語を使いすぎていなかったか。

相手が確認しやすい伝え方だったか。

管理者自身も、コミュニケーションを学び続ける必要がある。

第三に、失敗から学ぶ仕組みをつくること。

間違いを個人の責任だけで終わらせず、なぜ起きたのかを確認する。

必要に応じて、指示の出し方や業務手順を改善する。

そして、改善した内容を組織全体で共有する。

この積み重ねが、働く人の成長と組織の信頼につながっていく。

沖縄とASEANをつなぐ、その先に。

沖縄とASEANをつなぐ外国人雇用の仕組みを考えるとき、私は採用人数だけを成果の中心に置きたくない。

何人採用できたか。

何人が日本に来たか。

もちろん、それらも重要な指標だ。

しかし、それだけでは見えてこないものがある。

働く人が安心して質問できているか。

管理者との信頼関係が育っているか。

日本語教育が、実際の仕事や生活につながっているか。

そして、働く人が成長を実感できているか。

こうした視点を持つことが、持続可能な外国人雇用につながるのではないだろうか。

人を採用することは、始まりにすぎない。

その人が働き続け、学び続け、能力を発揮できる環境をつくること。

そこに、これからの組織設計の重要な役割がある。

強い組織とは、誰も間違えない組織ではない。

分からないときに質問でき、失敗したときに学び直し、必要なときに助けを求められる組織である。

私は、そんな組織が増えていく社会を目指したい。

NAOKI SUEHIRO
Global Workforce Architect

NAOKI JOURNAL · ISSUE 003

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